EXHIBITION

「ブロッドフュアー・コレクション|日本の現代陶芸に見る景色」展
EXHIBITION
「ブロッドフュアー・コレクション|日本の現代陶芸に見る景色」展

大皿―織部焼
東田茂正(1955年生まれ)
東京都

何世紀にもわたって、日本の陶芸家及びコレクターは、焼成の工程で陶器に生じる自然の不完全さを喜んで受け入れてきました。釉薬の溜まりや焦げ跡、ひび割れ、くぼみは器の景色 と呼ばれ、16世紀以降、作品に新たな美しさや深み、価値を与えるものとして称賛されてきました。そして、日本語で「景色を楽しむ」と言う、独特の陶器の鑑賞の仕方へと発展してきたのです。日本の陶磁器は世界中の収集家の注目を集めてきましたが、その中でも南カリフォルニアに住むゴードン・ブロッドフュアー氏は、日本各地の窯の様式や技術を網羅する類まれなコレクションを築いています。 本展覧会では、彼のコレクションの中から選ばれた60点を超える現代陶芸作品を通じて、先駆的なコレクターの日本中を巡る旅を追体験することができます。

日本の陶芸文化は世界でも歴史が古く、紀元前1万年頃まで遡りますが、六古窯 (備前、瀬戸、常滑、信楽、丹波、越前) の歴史は12~13世紀まで辿ることができます。本展覧会では、日本の西から東へ、作品の制作場所を地理的に分類し展示しています。そうすることで、土地ごとの土の特徴や古くからの伝統が現代の陶芸のデザインにどのように取り入れられているかを窺い知ることができるでしょう。例えば、山下譲治の花瓶や壺には、温かみのあるオレンジ色の模様を作り出すために、器の周りに地元の田んぼから集めた藁を巻く備前焼の技術が用いられています。また、小原康裕は、窯の中で長石粒がはじけてできる信楽焼の粗い肌理や伝統的な釉薬技術を利用して、多様なフォルムを生み出しています。

陶芸は日本の日常生活に不可欠なものです。欧米のコレクターがより大きく、大胆な陶磁器を自宅に飾って楽しむ一方で、日本のコレクターは実用的な陶磁器を好む傾向があり、お茶会や普段お茶を飲む際に使うほか、花を生けたり、お香を立てたり、また飲酒や食事の場面でも使います。 日本では16世紀に、上流社会で人間関係を深める手段として茶道が普及し、日本製陶磁器の需要が高まりました。茶道では、抹茶をいただく前に抹茶の緑と茶碗の色のコントラストを鑑賞し、抹茶をいただいた後には茶碗の美しい仕上がりや形、茶碗の景色を見て楽しむ茶道具拝見という習慣があります。

本展のキュレーターは、ロサンゼルス郡立美術館 (LACMA) のホリス・グドール氏です。グドール氏は2006年のLACMAでの展覧会でもキュレーターを務め、その展覧会を機にブロッドフュアー氏は日本の現代陶芸に目覚め、収集を始めました。ブロッドフュアー氏個人の視点を際立たせるために、本展では、陶磁器商で写真家でもある伊藤泰二郎による自然をテーマにした写真も展示します。伊藤氏はブロッドフュアー氏の友人でもあり、彼と一緒に日本中を旅して美術品を収集してきました。多くの陶芸家の制作活動に欠かせず、ブロッドフュアー氏にインスピレーションを与える自然。その風景を写し出す写真は観る者に、陶器と自然との深いつながりを考える機会を与えてくれます。

本展の鑑賞を通して、来場者はそれぞれ自らの人生経験をもとに陶器の上にさまざまな景色を見出し、それをスマートフォンに保存し、共有することができます。ゴードン・ブロッドフュアー氏のコレクターとしての鋭い感性に触れ、日本の現代陶芸の世界にあふれる自然との関係や職人技、個々の創造性に対する彼の審美眼を体感することができるでしょう。

面取り花瓶―萩焼
兼田昌尚(1953年生まれ)
山口県

球形花瓶―丹波焼
西端正(1948年生まれ)
兵庫県

四角大皿―信楽焼
小原康裕(1954年生まれ)
滋賀県

積層―施釉陶器
泉田之也(1966年生まれ)
岩手県

ホリス・グドール:日本美術キュレーター

1981年よりロサンゼルス群立美術館 (LACMA) に勤務。1986年から1988年まで京都大学で研究員を務めた経験を持つ日本美術キュレーター。日本美術パヴィリオンの展示を統括し、展示計画、教育プログラム、ウェブプログラムに加え、コレクションの管理、発展及び研究を担当する。1988年から2018年にかけて275回以上の常設展示及び特別展示を手がけ、その中には Shin-hanga: New Prints in Modern Japan (新版画:現代日本における新たな版画、1996年)、Munakata Shikō: Japanese Master of the Modern Print (棟方志功:日本の現代版画の巨匠、2002年)、Hosoe Eikoh and Butoh: Photographing Strange Notions (細江英公と舞踏:不思議なイメージの撮影、シャーロット・コットン氏との共同キュレーション、2008年)、Washi Tales: The Paper Art of Ibe Kyoko (和紙の物語:伊部京子の和紙造形、2011年)、Ohie Toshio and the Perfection of the Japanese Book (大家利夫と日本の装幀本、2012年)等がある。1999年、ワシントン・ナショナル・ギャラリーのカタログ Edo: Art in Japan, 1615-1868 (江戸:1615~1868年の日本美術) の中で、Workers of Edo: Ambiance, Archetype, or Individual (江戸の職人:雰囲気、原型、個性) の章を担当。2003年半ばには、The Raymond and Frances Bushell Collection of Netsuke: A Legacy at the Los Angeles County Museum of Art (レイモンド・ブッシェルとフランセス・ブッシェルの根付コレクション:ロサンゼルス郡立美術館の遺産) を出版。2008年には、サンディエゴ美術館のカタログ Kimono Redefined: The Landscape Art of Itchiku Kubota (着物の再定義:久保田一竹の風景画) に Kubota as Imagist: Reinventing Pictorial Icons in Kimono Form (写象主義者としての久保田:着物における模様や柄の改革) と題するエッセイを寄稿。最近出版された記事には、Andon 97 に掲載された The ‘Greater Taishō’ era: a boiling cultural stew (大正期:文化のごった煮) やロンドンの Sydney L. Moss, Ltd. が出版した Lac, Lacquer, Lacquest に掲載された The Single-Minded Duplicity of the Fox (狐の徹底した不誠実性) がある。2015年には、Living for the Moment: Japanese Prints from the Barbara S. Bowman Collection (今を生きる:バーバラ・S・ボウマンコレクションの日本版画) というタイトルでカタログを出版、同名の展覧会を開催。そのコレクションは後にLACMAに寄贈された。1977年、テキサス大学学士号取得、その後カンザス大学東アジア美術修士号取得。

ゴードン・ブロッドフュアー:コレクター

1942年サンディエゴ生まれ。太平洋艦隊に所属していた祖父が持ち帰ったアジアの装飾品があふれる家で育つ。ロンドンにある英国王立音楽大学及び英国王立音楽院でクラシックピアノを学んだ後、アメリカに戻りピアノ教育と家族の所有する不動産の管理に従事。この間、アジア美術に関連のある芸術団体の支援を始め、 クラーク日本美術文化研究センター及びサンディエゴ美術館の理事を務める。さらに、後者の理事会ではアジア美術評議会に属し、Art of Elan室内楽シリーズを統括。また、米国日本美術学会の中心メンバーとしても活動する。LACMA日本美術パヴィリオンを偶然訪れた際に、ビル・クラーク氏 (クラーク日本美術文化研究センター会長) によるジャパン・ソサエティーの講演で、日本の現代陶芸収集の可能性に関する見識を得て、本格的に収集を始める。この時、ジェフリー・ホルヴィッツ氏とキャロル・ホルヴィッツ氏が貸し出していた日本の現代陶芸の巨匠たちによる優れた作品に出会う。この経験を機に始めた収集の旅は現在12年目となる。最終的な目標は、自らのコレクションを一般公開すること。収集した作品を、LACMA、シアトル美術館、ミネアポリス美術館、リングリング美術館等の施設に寄贈することで、日本の現代陶芸のコレクションを増強していくことが彼の望みであり、コレクションを一般公開することで他者に刺激を与え続けたいと考えている。

  • 会期
  • 2019.04.17―2019.06.09
  • 月曜日~土曜日
  • 10時~20時
  • 日曜日
  • 10時~19時
  • 場所
  • ジャパン・ハウス
    2階ギャラリー
  • 価格
  • 入場無料