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ジャパン・ハウス

CULTURE

紙と人生の芸術
2017.03.10

和紙職人 小林康生氏は挑戦を果たし、伝統芸術の和紙に革新をもたらす

 

小林氏「和紙は人間のように、年をとり、年を重ねるごとに強靭になる」

私たちの生活においてごく当たり前に存在するもので、その発明がいかに革新的なものであり、どのようにして約5000年前に生まれたかを私たちは忘れてしまっている。紙の前身であるパピルスは、ナイル川の河岸で採られた植物の繊維から作られエジプトで生まれた。さらに丈夫な羊の皮から作られた羊皮紙、麻のペーストと植物繊維から作られる中国紙に行きつくまで発明のプロセスが引き継がれる。ペーストを漉いて日光にさらされた紙は、2世紀初頭に生まれた。

紙の発明は世界を変え、人が学び、働き、連絡を取り合う形を変えた。当時、紙は主に芸術性と歴史、機能性と美しさを持ち合わせていた。しかし年月が経過し、製造工程が進化するにつれ手漉き技術は徐々に失われ、世界中で忘れられていった。しかし日本では、紙の手漉き生産は1300年以上の歴史を保ち、今日まで国の財産として引き継がれている。
 

和紙


紙が日本に伝わったとき、製作手法は別のプロセスを踏むようになり、日本の植物繊維が使われるようになった。漂白剤を足さずに楮(クワ科)の樹皮の繊維から作られた和紙が知られている。現在、この紙漉きの技術はユネスコの無形文化遺産となっている。

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紙漉きの工程は細心の注意を払わねばならず、和紙は類を見ない強さ、美しさ、強靭性といった特性を持ち、その用途はさまざまに日本の生活と文化にとって重要な役割を担っている。和紙は折り紙、アート作品、水引き、照明、また和傘―日本の有名な伝統的な傘にも使われている。その強さと光を通す性質から照明や窓の遮光、障子、ふすまにも使われている。

和紙の特性は、その製作工程において長繊維の植物を使用することに由来する。この繊維は時間の経過による退化を緩和し、耐久性を持ち、その見た目と強靭さを長く保つ。また、耐久性があるにもかかわらず、和紙はその滑らかさと柔らかさで知られている。


紙漉きは根気と時間を要する作業である。楮の皮は何日間も水に漬けられた後、煮沸され、塵などが取り除かれる。植物繊維はほぐしてから再び水と混ぜられ、網で漉かれ、乾かすため日光にさらされる。この工程は気を遣うもので、時間もかかる。繊維を白くするために、樹皮の束は冬の間、雪の上で日光にさらされる。そうすることで繊維は自然で光沢ある白いトーンになるのだが、化学漂白剤を使った白さとは異なる。
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ジャパン・ハウス サンパウロ
の和紙

伝統的な紙


和紙は二人の著名な日本人・和紙職人 小林康生氏と高名な建築家 隈研吾氏による革新的なタッグにより、ジャパン・ハウス サンパウロの重要なパートを形成する。小林氏は紙漉きに人生を捧げ、隈氏は日本をはじめ中国、フランス、スイス、イタリア、英国など世界中の作品で知られている。隈氏が設計を手掛けた日本の国立競技場は、2020年東京オリンピックのメイン競技場に選ばれている。


ジャパン・ハウス サンパウロに向けて、隈氏はFGMF建築事務所と連携しながら金属メッシュが使われる空間を設計し、和紙でそのパネルをコーティングすることを思いついた。そのため、金属メッシュを組み込むのに新たなステップとして小林氏の伝統的工程をプラスするという、革新的な挑戦が必要になったのである。容易なことではなかったが、試験を重ねた結果、小林氏は期待どおりのものを作り上げることができた。

小林氏は和紙製作技術の権威であり、楮の栽培と和紙の手漉き技術を教えその振興を目指す、日本の門出和紙生産組合の設立者でもある小林の工房では何世紀もの時間をかけて培われた技術と地元の天然資源を使って、生態系のバランスをとっている。一例として、原生植物の樹皮や木の実からできた染料を使った紙の染色が挙げられる。

ジャパン・ハウス サンパウロにおける初の試みのため、小林氏は1週間かけて、金属メッシュに和紙をコーティングする手法をブラジル人作業員に指導。小林氏は和紙でできた材料を持ち込んで、作業員に刻ませて溶かし、その溶剤をどのように調整させるかを教えた。いとも簡単に聞こえるが、手漉き和紙の世界には簡単なことは何もない。製作工程はとても緻密であり、金属メッシュは和紙を溶かした液体に浸されて、太陽光にさらして乾燥する。メッシュは最低2回この工程を経る必要があり、忍耐力と繊細さを要する作業である。

小林氏は製作がうまくいくよう、もう1つ別の要素を使うことを明示しようとしていた。それは自然に対する畏敬の念である。「和紙には人間のように命があり、年老いる」と述べ、さらに「天然素材は弱く、注意を払う必要があるが、年を経るごとに強くなっていく。すなわち、和紙は時間とともに強靭になっていく。完成時は強いが、その後劣化していく人工製品に起きることと対照的なものなのだ」と語る。

小林氏がブラジル人作業員に教えたことは、技術以上のものであった。分かち合うことの大切さについて教え、これは人と人の共存、国民同士の共存のためには欠かすことができないものであると話した。「知識、喜び、人生の良いことを分かち合うことが一番大切なことである。なぜならば、分かち合うことなしに私たちは完全に幸せになることはできないからである。」

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